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※2025年7月時点の情報です。
西荻窪にあるシーシャカフェ「La vie en Loose(ラビエンルーズ)」のシーシャの作り方は、初心者でも“味と煙”を両立させたシーシャが作れるように、再現性の高い工夫が施されている。
本記事では、オーナー・こーじさんの理論をもとに、ラビエンルーズで実践されているシーシャの作り方を6つのステップで徹底解説する。
トップのセッティング:80Feet&ターキッシュリッド
使用している炭:KINGCO(フラット)
フレーバー選定の前に押さえておきたいのが、熱耐性(焦げにくさ)・グリセリンの揮発性(味や煙の出やすさ)・熱変性(熱量による味の変化)という3つの要素だという。中東系とアメリカ系のフレーバーの特徴を例にあげると以下となるとのこと。
(例:Al Fakher、Nakhla、Afzal)
タバコ葉にグリセリンがしっかり染み込み、味持ちが良い。長時間(2時間以上)吸いたい場合に向く。火力調整で香りが開くタイプ。
(例:Social Smoke、Fumari、Azure)
汁気が多く、香りが煙に乗りやすい。短時間で味を出したい時やミックスの香り付けに最適。
中東系フレーバーでベースの味を作り、アメリカ系フレーバーで、トップの香りを立たせると、初心者でも扱いやすく飽きのこない1本になるとのこと。
こーじさんは「最初に出したい味を上に、後から出したい味を下に」というレイヤー構成を基本としている。味が濃いフレーバーは下にする等、フレーバーにより調整する。
たとえば、今回のセッティングでは「オレンジ→ジンジャー→カルダモン→オレンジとジンジャーのミックス(半セパレート)」の順にレイヤーを組んで、中盤までオレンジを持たせつつ、ジンジャーの刺激をアクセントに加えている。
ラビエンルーズではフレーバーのグラム数は決めず、アルミとの距離を基準にしている。トップの大きさは種類によって異なるため、グラム数を固定するとアルミとの距離が変わってしまい、熱の伝わり方や味に影響するからだ。
トップ内の熱の伝わり方は、フレーバーの上部(アルミ接地面)、トップの外側、トップの内側の順となる。
そのため、なるべくフレーバー全体に均一に熱を伝えるために、トップの縁にフレーバーが付かないように盛る。
最後に、トップの中央の穴の上に、アルミを棒状にした小さなブリッジを置くことで、アルミ穴を塞ぐ可能性を低くし、熱と空気の流れを安定させる。
アルミの穴から入った熱風は、トップ中央の穴に向かって通り抜けていくことを意識する。
基本的にはアルミの外周に穴をあけることで、味わいや煙感、ニコチン感をしっかり濃く出すことができる。
アルミに穴をあける際は、中央に向かって斜めに針を通すのがポイント。
一方で、吸いを軽めにしたい場合や温度の上がり過ぎを避けたい場合は、内周にも穴を追加すると良い。
炭替えのタイミングなど、途中で「軽くしたい」と感じたときに追加で穴をあけるのも有効。
KINGCOのフラット炭を3つ、倒した状態で設置して蒸らす。
ラビエンルーズでは、蒸らし時間を【9分】に設定している。
こーじさんは「最適は6分だと思っていて、9分は少し“攻めている”ように感じられるかもしれない」と話す。
この蒸らし時間の背景には、フレーバーに含まれる香料とグリセリンが揮発する温度の差がある。
香料はグリセリンよりも低い温度で揮発し始めるが、グリセリンが全体に行き渡ると耐熱性が高まり、焦げにくく安定した状態になる。
また、3分や6分で仕上げる場合は、吸いで味と煙を完成に持っていくコントロール技術が必要になる。
一方、9分は火力と蒸らしだけで味と煙が安定しやすく、吸いによる細かい調整の必要が少ないと考えている。
ただし、アメリカ系のような熱耐性が低いと考えられるフレーバーは、蒸らし時間を6分で調整する。フレーバーの特性を見て蒸らし時間を設定する必要があるという。
[ 3分 ] グリセリンが動き始め、低温で揮発する香料が立ち上がるが、味は不安定。吸いで完成まで持っていく技術が必要。
[ 6分 ] グリセリンが全体に行き渡り、ほとんどの香料が安定して煙に乗る状態。味と煙が整いやすい。
[ 9分 ] 全ての香料が十分に立ち上がり、味と煙がピークに。吸いの調整はほぼ不要だが、火力管理を誤ると焦げやすい。
初心者には6〜9分のレンジが扱いやすく、再現性の高い蒸らし方になるとのこと。
9分間の蒸らしの中で、こーじさんは6分と9分で2度の確認タイミングを設けている。
味と煙がまとまっているかを軽く吸って確認。
煙の状態を見て、炭の位置を(フラット炭を倒したまま)少しずらし、そのまま置いておく。
再度軽く吸って味と煙をチェック。
まとまっていれば、2~3回トロトロとゆっくり吸って整える。
続いて、炭を立てて(フラット炭を縦向きに置く)火力を調整し、1分ほど待ってから吸って、完成となる。
こーじさんは「吸えば吸うだけフレーバーにダメージが入る」と考えており、初期段階ではなるべく吸わないことを重視している。
特に最後の1分は、トップ内に熱をしっかり溜めるための時間であり、吸いすぎるとその空間熱やフレーバーの旨味がどんどん失われると考えている。
また「最初の味にインパクトを出すこと」を大事にしており、その味を長持ちさせるためにも、この手順で必要最小限の吸いにとどめ、味と煙を整えてから提供している。
シーシャ専門店では、炭を電熱線で加熱するのが一般的だが、この方法では炭が生焼けのままだったり、炭の深部まで加熱されていない状態になることがある。こうした炭は火力が弱く、熱が不安定になるだけでなく、不完全燃焼によって一酸化炭素の発生量が増えることがある。
ラビエンルーズでは、この状態を避けるために、手回し式の送風機で炭全体にまんべんなく空気を送り込む。送風によって酸素供給が増え、燃焼が促進されることで、炭の内部までしっかりと火が入りやすくなり、生焼けや中心部の低温状態を解消できる。これにより燃焼効率が上がり、一酸化炭素の発生量も抑えられる。
さらに、蒸らし中や吸い出しまでの待ち時間にも定期的に送風し、火力を安定させることで、トップ全体に均一な熱を伝えている。
この炭の火力管理は、蒸らしの成否や最終的な味・煙の質を大きく左右する重要な工程だ。
ラビエンルーズ流のシーシャは、フレーバー選定・レイヤー構成・盛り方・アルミの穴のあけ方・炭の熱管理・吸い出し方・仕上げ方の全てが組み合わさって完成する。一本にかける理論と感覚の絶妙なバランスが、味と煙の質を決めている。
こーじさんの手法は理論的に緻密でありながら、手順がシンプルで再現性が高く、初心者でも真似して美味しいシーシャを作りやすい。
まずはこの作り方をマスターし、安定した味と煙を再現できるようになることが第一歩だ。
その上で、シーシャ作りに存在するさまざまな変数──フレーバー、盛り方、アルミの穴、蒸らし時間、吸い方──を少しずつ変えて試してみよう。そうすることで、自分だけの味を探る“研究”の過程そのものが面白くなり、何度も挑戦したくなるはず─。
美味しいシーシャは一朝一夕で完成するものではないが、このラビエンルーズ流を基盤に変数を組み換えながら、自分だけのベストな一本の作り方を見つけていく時間もまた、シーシャの楽しみの一部だ。
誰もがサードプレイスを持ち、他者との繋がりを感じながら、精神的に豊かな人生を送れる社会を実現させるために2017年より活動して参りました。
そのためにATARSHISHA(アータル)は、シーシャのカルチャーを記録、編集、発信すること通じて、シーシャカルチャーを形作る~Shape the Smoke~させて参ります。
サードプレイスの文脈にシーシャを載せ、ITの発達とともに希薄化されてきたコミュニティー、人間関係を豊かに変えるライフスタイルを提案いたします。