東京・西荻窪駅から徒歩1分。下町情緒と新しいカルチャーが融合したユニークな街、西荻窪の駅前ビル5階に『La Vie en Loose(ラビエンルーズ)』がある。
店名は、フランス語で“バラ色の人生”を意味する「La vie en Rose」をもじった造語で、「ルーズな人生も、またいいじゃないか。」という人生観が込められている。
オーナーのこーじさんが目指したのは、「完璧じゃなくていい、ちょっとゆるくて、でもちゃんと心地良い。」そんなサードプレイスだ。
ラビエンルーズは、店員とお客さんが会話を楽しむ、古き良きシーシャ屋のスタイルを大切にしている。「店に来る人は、全員“家に遊びに来ている”くらいの感覚で迎えたい」とこーじさんは語る。
年齢も趣味もさまざまな人々が受け入れられ、自然に溶け込める店内には、心地良い空気が流れている。
● シーシャを入り口に、カルチャーが交わり、共創する場所
ラビエンルーズでは、ジャンルレスにカルチャーイベントを開催している。
DJイベント、短歌会、古着とハンドメイドのパワーマーケット、さらにはカードゲームの大会まで—その多くが、常連たちとの“共創”から生まれている。
週末限定で提供される自家製プリンは、お菓子作りが好きな常連が毎週仕込んだもの。お金のやり取りではなく、“トップ替え”との物々交換という、ラビエンルーズらしい関係性で成り立っている。
カウンターに並ぶクラフトジンやウイスキーなどのアルコールのラインナップも、お酒が好きな西荻窪のお客さんのリクエストを受け入れて、少しずつ増やしてきたという。
昼は本を読みに来る人や、リモートワークをしに来て、個室をオンライン会議で使う人もいる。
夜はお酒を片手にシーシャを吸いながら語らう人など、自由な使い方ができるのもこのお店の魅力だ。
● スタッフが自ら考える仕組みが、シーシャを育てる
もちろん、シーシャのクオリティに抜かりはない。
トップは、80Feetにターキッシュリッドを使用して、ハイヒート寄りのセッティングを基本としている。
炭は、KINGCO(キンコ)を使用してあえて雑味を活かすなど、マニアックながらも理にかなったこだわりが詰まっている。
こーじさんは「どうすれば、スタッフが自ら試行錯誤して、本当に上手くなれるか」という視点から、ステムの長さや機材の種類を意図的にバラバラにし、スタッフ自身が自発的に研究・成長できる環境を整えている。
作り方の基礎から応用まで、スタッフがシーシャの構造を理解しながら技術を磨ける仕組みが整えられている。
● 緻密に計算された、ゆるいサードプレイス
「緩い人生でもいいじゃん」という精神で始まったラビエンルーズは、その名の通り、肩肘張らない空気感が魅力だ。
しかし、その“緩さ”は決して“いい加減”とは違う。
むしろそこには、絶妙な距離感で様々な人を迎え入れ、自由に過ごしてもらうための緻密な設計がある。
お客さん同士が自然に会話を始め、誰かの「やってみたい」が受け止められ、実現していく。
スタッフは自分の頭で考え、手を動かして、このお店の味を育てていく。
あえて“余白”を作り出すことで、サードプレイスが形作られていく。
こーじさんのつくる空間には、暗黙の信頼と心地良いリズムがある。
ただ煙を楽しむだけの場所ではない。人と人が交わり、表現が生まれ、思いがけない何かが生まれていく。
そしていつの間にか、自分の“居場所”になっている。
ラビエンルーズは、そんな不思議な引力を持ったお店だ。